Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [64]   アルジャーノンに花束を(2)
2006年2月28日 ソワレ
博品館劇場(東京)
チャーリー: 浦井健治 アリス :安寿ミラ
ニーマー教授・ギンビィ: 戸井勝海  ストラウス博士・ドナー・マット:宮川浩
フェイ・ジョー:小野妃香里 ヒルダ・ファニィ・ローズ・ノーマ:朝澄けい
バート・フランク・リロイ:永山たかし アルジャーノン他:森新吾 
ルシル・エレン・ノーマ:小田島クリスティン
 
今、肩を痛めており、レビューは断念するつもりでした。昨日は、終演後、痛くて、痛くて夜中に鎮痛剤4錠も飲みました。でもこの情けない生活でありながら、心は何だか小さな感動のさざなみにふるえているのです。気持ちをおちつかせるためにも、やっぱりレビューは残しておこうと、片手でノートパソコンを運んできて、片手でうってます。
 
今回は2度目、公演ももう半ばではないかと思われます。一幕の途中で、う〜ん、浦井君、声が疲れてますよと思ってちょっと心配していたら、二幕はまだ前半なのに、見ているこちらがひやひやするほどかすれてくるじゃあありませんか。二幕というのは、チャーリーが知能がどんどん高くなっていき、しかしそれに情緒がついていかなくて、苦悩やいらだちがつのり、まわりの人にそれをぶつける場面がたくさんでてきます。歌もけっこうその思いをこめたものだし、いらだって声をあらげたりもします。もう、身内のわたしとしては、痛々しくて、愛おしくて、チャーリーがかわいそうなんだか、浦井君がかわいそうなんだかわかんなくなるし、肩もズキズキするし、涙じわじわにじんできます。プロとしては、こんな力配分は、絶対に一流とはいえないことでしょう。でも、その一生懸命さは、どうにも心をうってくるのです。チャーリーがひたすら、かしこくなりたいともだえるように求め続け生きる姿とこの舞台を演じきろうとする浦井君の姿が重なって、胸の奥深くで熱い思いがあふれそうになってきたのでした。この未熟ささえ、愛しく、輝いて見えたのです。
 
こういう未熟さをカバーしてくれているのが宮川さんの歌声なのです。今回、ぼろぼろに傷ついた浦井君をもうとめてやりたい、でも感動的なアリスにすがる場面なので盛り上げたいところで宮川さんのソロです。
 
と、ここまで書いて、昨日は挫折しました。相変わらず肩はなおりません。昨日は、マチネがあったんですね。大丈夫だったかしら、浦井君。こうして、少し時間がたっておちついてみると、ちょっと地方公演を控えて不安なことが。それは、このような傷つきやすい感情むきだしの役って、浦井君は途中で、煮詰まっちゃうんですよ。初年度の時のルドルフがそうでした。3月に観たときは、初々しさに輝いてやっぱりそのひたむきさにうたれました。それが、4月、5月と重ねていくに、弱虫、泣き虫のルドルフになっちゃって、ちょっとひいちゃったんですよ。2年目は、それを乗り越えていて、よくはなってたんですけど。チャーリーって、もっと感情がストレートだから心配です。一生懸命演じることはいい。でも、プロとして、頭の中では、常に冷静に自分をみつめてコントロールするもう一人の自分がいないといけないと思うよ。でも、でもね、そういうのがないのが、また、うったえかけたりもするんですけどね。なかなか、むずかしいところです。
 
今回の戸井さんの役は、今までわたしが知っていた心やさしき憂いの人でなく、冷たくて自己中心的な教授とか、悪い人ではないけれど、ちょっと不正もするパン屋の主任とか、普通の人のちょっと意地悪な面をあらわす役でした。歌がもっと多いとよかったんですけど、宮川さんにもっていかれてしまいました。特によかった歌は、’ウォレン、ウォレン’と、ウォレン養護施設のことを皆で歌った歌でした。悲惨で悲壮な歌ですが、なんか心に響きました。戸井さんが歌った中でここが一番よかったです。しつこいようですが、宮川さんと役をかわってほしいです。宮川さんもよいのですよ。宮川さんの歌ももっと聞きたいです。そうだ、日替わりで役を交代するというのはどうでしょうね?
 
肩が不自由なのを我慢して残すほどのレビューにもなりませんでしたが、なんだか吐き出さないと苦しいのです。当日券があって、肩が悪くなければ、もう一度みたいです。日本の舞台で、このような気持ちになることは、とても珍しいことです。CDが出るそうなので、申し込まなくちゃ。楽しみです。再演希望します。
 
 
 
update:
2006/03/12



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