Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [65]   アルジャーノンに花束を(1)
2006年2月25日 ソワレ
博品館劇場(東京)
チャーリー: 浦井健治 アリス :安寿ミラ
ニーマー教授・ギンビィ: 戸井勝海  ストラウス博士・ドナー・マット:宮川浩
フェイ・ジョー:小野妃香里 ヒルダ・ファニィ・ローズ・ノーマ:朝澄けい
バート・フランク・リロイ:永山たかし アルジャーノン他:森新吾 
ルシル・エレン・ノーマ:小田島クリスティン
 
この作品は、かの有名なダニエルキスの小説が原作です。ミュージカル化するには賛否両論だったそうです。わたしも走り読みではありますが、過去に読んだことがあります。多くは、この小説は大好きという人が多いなか、わたしはだめでした。なんだか救いがなくて。それを浦井君がやるというじゃありませんか。観る前から、手術を受ける前に憐れみさげすまれた姿や、手術を受けてかしこくなった苦悩にさいなまれ、やがて退行していく恐怖におののく姿を想像できて、あまりに痛々しくて観たいけど観たくないわと思っていたのでした。
 
と、いいつつ、身内のような気持ちで浦井君を見守り続けている者として、見逃すわけにもいけいません。それに、戸井さんもでてるしね。浦井君と戸井さんが同じ舞台でみれるなんて、生きていればいいことあるもんです。
 
そしてですね〜、結果から先にいってしまうと、浦井君をこの時にこの主役に抜擢したプロデューサーの英断はほめてあげたいです。小説は、チャーリーが一人称で語る物語でした。こちらは、語るのはアリスなんですが、その分チャーリーはでずっぱりで、その変化を逐一みせます。こんなに出ずっぱりで、こんなにたくさん歌う浦井君をみたのは初めてです。浦井君の魅力は、長い手足、ちっちゃくてかわいいお顔に代表される見た目のよさです。それに加えて、この子って、どうしようもなく胸をきゅんとさせるようなひたむきさというのがあるのです。きらきら光る瞳をまっすぐこちらに向けて、舞台の上から一生懸命うったえかけてくるあの初々しさ。今回の舞台は、その集大成のようでした。チャーリーを天才的にうまい役者が演じたら、やっぱり名作にしあがったりするのでしょうが、まだ若く未熟な彼がみせたひたむきな情熱はそれに勝る感動を与えてくれたと思うのです。この作品は、多分彼が同じ主役で、再演されるだろうなと思うのですが、これから経験をつんで技術を磨いた浦井君よりも、手探りの中でがむしゃらに演じた今がきっとすばらしいと思うのです。夜が明ける頃、つぼみが花をひらく瞬間はものすごく美しいのだそうです。浦井君にとって、この舞台は、そんな瞬間だったように思えました。
 
浦井君のことばっかりほめてもいけませんんので、具体的なところも書きましょう。脚本はうまくまとめられていました。最後の方が原作ってこうだったっけ?と思うところもありましたが、原作より救いがあり、観たあと、ああ、なんだかいやだわというような気持ち悪さはありません。音楽はわりと美しい系ですし、ミュージカル作品として成功といえます。博品館は狭いので、セットがちょっと多すぎてもっとすっきりさせてくれたほうがよかったのですけど、メジャーになったら、ルテアトルあたりに進出する心づもりなんでしょうか?これは、いまいちだったのが、アルジャーノン。ねずみ役の役者さんがいるのですけど、あんまり意味なかったかな。ダンスしたり、微妙なチャーリーの心の動きを表す役なんですけど、効果をあげたと思う箇所はなし。ダンス下手だし。具体的な姿がなく、人々の会話の中にだけ登場したほうが観客の思いがひろがったのではないかと思われます。次回からはずしたほうがよいです。
 
脇役の方々が歌がうまいのがよかったですね〜。戸井さんは、もちろんのこと、宮川浩さん、よいのですよ。この方は、レミゼラブルのCD滝田版のマリウス役でした。ジキル&ハイドでこの前みたんですけど、あんまり印象にはなかったのです。(鹿賀さんや禅さんが強烈だったので)今回は、浦井君の次にいっぱい歌がある人で、戸井さんとかわってもらいたいなと途中思っていたら、聞いているにつれ、そのうまさに聞き入ってしまったのです。この声でEmpty chaires at empty tablesを歌ったのね、とダブルマリウス(戸井さん&宮川さん)の美声によいました。安寿ミラさんは、まあ宝塚だし当然でしょうと思っていたら、朝澄けいさんも宝塚だそうで、この方も大変よかったです。お母さん役、最後に妹もやりますが、悲しさと救いとこの方がもたらしてくれました。宝塚、底力があります。戸井&宮川、安寿&朝澄と、脇の歌と演技がしっかりしていることが作品のグレードを保持しています。
 
歌がいまいちだったのが、’テニスの王子様’の永山たかし君です。人気はある人みたいですけど、歌はね〜、もうちょっとがんばりましょう。この人は、なんかの劇団だかグループの人なんでしょうか?固定のファンの方がもりあがっていました。
 
もう、本日は、浦井君よくがんばったねという言葉に尽きます。歌も上手になってきました。火曜日もまた、観に行くからね。がんばって、地方の千秋楽まで、この気持ちのまま演じ切ってください。エリザベートのルドルフで発見したときに感じたあの魅力はやっぱり本物でした。
 
 
 
 
 
 
 
update:
2006/03/12



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