2005年10月9日 マチネ
自由劇場(東京)
ローズ:保坂知寿 アレックス:石丸幹二 ジョージ:村 俊英
ジュリエッタ:大鳥れい ジェニー:八幡三枝
妹がロンドンで優雅に駐在員の妻をしていた頃、それほど英語も得意でないけれどいくつかみたミュージカルの中で、一番好きといっていたのが、このアスペクツオブラブでした。キャッツもレミゼもみたはずなのに、曲がすごくきれいといっており、いつかわたしも観ようと思っていたらお友達が誘ってくれました。
これは、ミュージカルが嫌いな人には、絶対だめだなと思えるタイプのミュージカルでした。と、いうか、多分この四季バージョンは。日本人には、なんだかなじめない雰囲気がただよっており、終わったあとも、何なんだろうね?とクビをかしげたくなる感じが妙に残るのです。だけど、つまんないとか、退屈という類のものではありません。違和感ですね。おそらく、西洋人が日本の古い時代を演じたり、白人がドーラン塗って黒人の役をやったり(北欧のミュージカルはそうらしいです。)そういうタイプの違和感を覚えてしまったのでした。
この物語は、美しく言うと、芳醇な恋が人生を深めるという宣伝文句のとおり、ばりばりの恋愛劇です。が、はっきりいうと、内輪の人間同士がくっついたり、離れたり、え〜いったい、誰が誰をほんとうは好きだったんだろうねと恋愛に翻弄される人々の物語なのです。物語は、南仏を中心に、モンペリエ、ピレネ、パリ、ヴェネチアとロマンチックな土地を舞台に繰り広げられます。アレックスがはじめて17歳で恋に落ちた相手は女優のローズ。二人は、ピレネの別荘で休暇をすごしますが、パリからやってきた叔父のジョージとローズはそこで恋愛関係になります。ここまででも、うまくすれば雰囲気ただようロマンスの香りですね。だけどね、なんだか、四季の人々は妙なのですよ。別に俳優さんたちの実力がないというわけではありません。衣装だって、50年代だか60年代のおしゃれな雰囲気ばっちりだし、歌もみなさんお上手です。だけどね〜、なんでしょう?演出かな〜。。。
噂の石丸幹二さんは観てみたかったのです。オペラ座のラウルで有名な方ですね。最近では、異国の丘の人ですね。なるほど、整った顔立ちです。華やかさもあります。が、アレックスを演じるには、あまりに年齢いきすぎました。一幕は、とにかく17歳から19歳くらいまでで、最後も計算すると32歳から35歳くらいだと思うのですが、どうみても10代の初々しさはなく、最後の方も落ち着きすぎ。途中で、ヒューゴ役の人とか、お葬式の人々に若い子も四季にはいるようなので、彼らに譲ってやったほうがよかったのではないでしょうか。この場合、石丸幹二さんに好意的でないと、アレックスのヨーロッパヨーロッパした歯のうくようなセリフや、斜め45度に構えて歌い始める姿がちょっと心恥ずかしく思えます。ローズの方とジュリエッタの方は、大変美しい方々でした。特にジュリエッタの人は、なんで、ふたりともこの人と結婚しないの?というくらい役もふくめよかったです。ジョージは、実はどういうのが本当かわかりませんが、結構おじさんで、大人といえば大人であれは、あれでよいかなと思いました。この人は、あまり違和感なかったし。だけど、劇場のマネージャーの人と外見が似ており、別々に出てこられるとどっちがどっちかわからなくなりました。個性うすいです。これは、だめだわと思ったのが、ジェニーです。ローズの娘です。ローズの娘なのに、美しくないんですよ、この女優さんが。ここは、思い切って、若い10代の美少女を起用してほしいところです。子供から少女、そして大人の女性の入り口にたつ危うさを漂わせる人でないと、この物語はなりたたないと思えます。
結構、辛いことを書いていますが、駄作とは思えないのです。何か、もっとちゃんとしたものを秘めていそうな予感はあるのです。これは、やっぱりウエストエンド版を観たいです。(今は、やっていませんが)観ながら思ったのは、アレックスはなんといってもオリバー君(Oliver Thornton)でしょう。今の彼なら、17歳から35歳までやっても全然問題なしです。もう少しのどを鍛えて、’Love changes everything'を冒頭から歌ってほしいです。なんたって、最初から最後まで出ずっぱりだし、軍服着るし。アレックスの一途さやしたたかさが、彼の美しさでいっそう際立つことでしょう。これ、初演は、マイケルボールさんだったそうです。歌はよいけど、ちょっとくどい感じですね。
四季版は、悪いということはありません。四季の方々は、きちんとしています。特にお葬式の場面などは、アンサンブルの方でもちゃんとしたダンスをみせてくれました。サーカスの場面も華やかですしね。そうね、やっぱりヨーロッパとの文化の違いをここで表現することは簡単ではないということでしょうか。翻訳物のむずかしさをみたような気がします。いつの日か、ウエストエンド版を見るときの予習版ですねl。
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