2005年9月1日 ソワレ
帝国劇場(東京)
エリザベート:一路真希 トート:内野聖陽
フランツ:石川禅 ルドルフ:浦井健治
本日、初日です。1年3ヶ月ぶりの帝劇だそうです。わたしは、この間、ウィーンでオリジナルを観ているので、すご〜く久しぶりという感じはありませんでした。今回は、たったの1ヶ月なのにルドルフがトリプルキャストで、チケットとるのが大変で、日程が変にかたまってしまいました。これから、1週間弱は、エリザベートウィークなのです。
本日の席は、2階のA席の最後列というどうでもよい席ですのでオペラグラスが必要でしたが、まあ、浦井君以外は肉眼でも問題ありません。昨年末にウィーンで観た舞台が割れたり、盛り上がったりする可動式ステージをみたせいか、舞台美術の迫力がちょっと欠けてます。が、今回、大変改善された点は、昨年大不評だった電飾がなくなり、基本的に夜空みたいな背景になったことです。わたしが踊る時や、夜のボートのシーンの星空は美しかったです。ちょっと、ブルーのライトがSwanの真似っこみたいと思えるところもありましたが。
わたしは、ずいぶんエリザベートにもなじんだのねと思ったことのひとつに、内野さんのトートの河村隆一感で笑いがこみあげなくなったことがあります。というか、内野さん、歌が上達したと思います。まあ、決してうまいとは思えませんが。この方の場合は、細かい演技とビジュアルでみせているので、歌は2の次、3の次ですから。それにしても、日本のトートは、衣装もちです。ウィーンのトートは、たった2着しかないんですよ。それも、アクセサリーなし。それに比べ、日本のトートは、場面場面で、いろんな衣装着替えるし、上着ぬいでもそれなりにおしゃれなお洋服だし。髪だって、青い銀髪だし。と、いえども、内野さんのトートは、やっぱり河村隆一なので魅力的ではありませんでした。
前回まで、お姑さんのゾフィーを演じていた初風淳さんがご病気で、寿ひづるさんがゾフィーを演じました。初風お姑さんもいい加減こわかったけど、寿さんはそれ以上でした。迫力というより、どすのきいた感じ。初風さんがカムバックしても、捨てがたい方です。今度再演するときは、ゾフィーもダブルキャストになったりして。
今回、なんといってもよかったのが、フランツの石川禅さんです。昨年は、最後の最後に1回だけ観たんですが、鈴木綜馬さんに比べて熱い人とだったなという印象でした。今回は、もっと禅さんの回のチケットをとりたかったのに、浦井君中心で選んだので、やっぱり今回も1回かぎり今日が最初で最後です。禅さんは、若い日と壮年と老年と歌声が全部違っていて、情感たっぷりなのです。まず、シシイにプロポーズした後のデュエットがよいです。’皇帝に自由などないのだ〜’ですね。このときは、若き皇帝ですから、マリウス並の甘さとはりのある歌声です。ここから、すでに、う〜ん、いいわと思っていました。で、壮年のとき、エリザベートに最後通告つきつけられて、全部わがまま受け入れるところ。このときは、ああ、若い時の声のほうがよいわと思い、この先はまだ長いのに残念だわ。また、マリウス聞きたかったよと思っていたのでした。が、終わり近く、ついにわかりあえないまま老年にさしかかり、コートダジュールの海岸でデュエットする'夜のボート’、すご〜いよかったです。通常は、このあたりは、ルドルフも死んじゃったあとだし、結構だれる場面なんですが、もうしみじみ、愛しても愛してもわかりあえなかった切なさにあふれていて、初めてフランツに心うたれてしまいました。思わず、帰り際、昨年の買ってなかったほうのライブCD買っちゃいました。あと、2回のチケットは鈴木綜馬さんなんですが、どうにかかわってもらえないものでしょうか。
そして、東宝版エリザベートといえば、浦井君ですね。わたしが浦井君に出会った作品ですから、思いいれもひとしおです。あいかわらず、王子様姿(この場合は、皇太子)をさせたら、この子以上に似合う若者はいませんね。ビジュアルはばっちりです。昨年の浦井君ルドルフは、回を重ねるごとにガラスのように傷つきやすくなり、最後のほうは、弱虫すぎだわと思っていました。感情も少し過多な感じがして、もっと抑えた中に苦悩をにじませてほしかったのです。その思いが届いたのか、本人も大人になったのか、今年は、本当にひとまわり大人になったルドルフでした。落ち着きがでてきて、’闇が広がる’の2コーラス目も、’僕はママの鏡だから’も、内面に感情をぐっと押し込んで、それでも苦悩がにじみでてくるという感じで、昨年涙を浮かべんばかりの甘えっこルドルフよりうったえるものは大きかったです。浦井君の成長ぶりを、大変嬉しく思いました。まだまだと思ったのは、ダンスです。どうもこの子は、腰がはいってないのはなおりません。基礎を鍛えなおしてやってほしいです。演技も歌も成長したのだから、課題はダンスですね。
今回、ルドルフ自殺のシーン、ずいぶんキスが長くなっていました。たしか、前は、キスしながら、ピストルを出して手渡しますが、今回は長〜いキスのあと、ピストルを渡して、くちびるを離してからが長いような気がしました。なんで、あそこまで、長〜くキスするのか不思議です。
一路さんは、やはり美しい方でしたが、ウィーンの迫力のマヤさんの歌を聞いた者としては、歌の面では物足りなさが残ります。’わたしだけに’や’私が踊る時’が日本で感動できないのは、残念です。外見が大変美しい方なので、いつまでもおひとりで続けるのかもしれませんが、そろそろ、エリザベートもトートも違うキャストで見てみたいなと思います。
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