2005年7月28日 マチネ
Victoria Palace Theater(ロンドン)
Billy : George Maguire Michel : Brad Kavanagh
Debbie : Brooke Havana Bailey
Ms Wilkinson : Haydn Gwynne Dad : Tim Healy
Tony : Joe Caffrey Grandma : Ann Emery
Dead mum : Stephanie Putson Billy's older self ; Isac James
最初から、何ですが、どうも当日のキャスト表すっかり違っているのではないかと思われます。デジカ メにおさめたキャスト表の画像によると、ビリーはジェームズ君で、マイケルはアシュレイ君、デビー はエマちゃんなんですけど、パンフレットの写真と見比べるとどうも上記が当日キャストであったと思 えます。結構、大事なことなんですが、自分の目を信じましょう。
この作品は、ご存知’リトルダンサー’の舞台ミュージカル版です。あの衝撃のラストシーンをのぞい てもよい作品でしたね。イギリス北部の炭鉱町の人々の生活の中で、ビリー少年が夢に向かって生きる 自然体の姿に涙しました。あの素朴なビリー少年のぶきっらぼうなローテンションをハイなミュージカ ルでどんなふうに表現するのでしょう。
イギリスの劇場は、開演前にベル鳴らしたり、アナウンスいれないところも多いです。ここもそういう のがないので、そろそろ始まりかなと思っていたら、子供が舞台の近くでうろうろしています。もう、 始まるのにこんな小さな子を歩きまわらしちゃいけないじゃないのと思っていたら、その子、オーケス トラピットを越えて舞台によじのぼろうとするのです。だめだめ、とめられるわと思っていたら、なん ともうはじまっていたのです。少年が舞台によじのぼると、炭鉱のニュース映画がはじまります。びっ くりしました。少年の仕草といい服装といい、一般の子かと思いましたよ。
覚悟の上ではありましたが、英語はすご〜くわかりません。映画でも、ビリー少年の独特な語尾をちょ っとあげて、ぷっつりきる話し方特徴的でしたが、こちらビリー少年、全く同じ話し方です。街の人々 の会話は、つらい生活の中にあるせいか、ちょっとしたユーモアがちりばめられているようで、観客の 人々は頻繁に笑います。が、笑えません。何ていっているのでしょうね。
映画と同じく、ビリー少年は、ボクシング部の罰として鍵をバレエクラスの先生に返すよう命じられ、 バレエクラスに迷いこみます。バレエクラスの少女たちが、よいです。うまくないんですよ。もう、そ の辺の町のバレエ教室の女の子のあつまりらしく、ばらばらで、太っている子もいるし、やせっぽちも いるし。ビリー少年、ここでいつのまにか、ダンスの群れにはいっています。映画では、ここで、ビリ ーが踊ることにみるみるうちに魅了されていくように思えたけど、舞台の子は、まだまだ少女たちの中 でとまどっている様子。いつ、こんなに踊ることが好きなったのか、ちょっとわかりにくかったです。
まあ、話は、映画と同じようにどんどんすすんでいきます。お父さんに隠れてバレエに通いつづけたり 、炭鉱のストライキが激しく生活が苦しくなったり、先生にロイヤルバレエ学校のオーデションを受け てみないとさそわれたりと。ふ〜ん、じゃあ、このミュージカルは、映画をそのままなぞっているわけ ね、というわけじゃありません。何がすごいといっても、これが、ミュージカルで生で観て、いいっ! って思えたのは、ビリー少年のダンスなのですよ。すごいよ。元気。タップも歌もバレエも、いったい この子のどこにそんなエネルギーがあるのだろうと思うくらい、休む間もなく、舞台の端から端まで動 きまわるのです。ただ、動きまわるのでなく、いいダンスするんですよ。特にタップ。これは、マイケ ル役のちょっとおでぶなださい少年もいいんです。ビリー一人がすごいのもすごいんだけど、このださ めの少年もうまいんです。ほんと、10歳か12歳くらいの男の子が、ここまで見せるかというくらい。ビ リーもマイケルもトリプルキャストとのことなので、あと二人づつ、こんな子供がいるってこと?イギ リスすごすぎるよ。一幕のラスト、ロイヤルバレエのオーディションに行く日、兄のトニーたちが炭鉱 のストライキのことで問題を起こして、家族が誰もビリーのことを応援してくれなくてオーディション に行けなくなるシーン、怒りのタップは迫力です。誰もうらむこともできず、家族をせめることもせず 、その閉塞した街と自分の運命と、もしかしたら正確にはその社会状況を把握していないかもしれない けど、とにかくやり場のない少年の純粋な怒りをタップでぶつけるのです。そのビリーのくやしさと迫 力と、胸にせまって涙しそうになりました。
2幕は、クリスマスのシーンです。サッチャー首相の合理化でつらい立場にいる街の人々は、彼女を皮 肉りながらパーティをします。お父さんが歌う順番がやってきて、お父さんしみじみ歌います。苦しい 街の状況がしみじみ響きます。そして、その夜、ビリーは大きくなった日の自分を夢みます。今回、映 画のあの衝撃のラスト、アダムSwanの飛翔が舞台で出せないことはわかっていたので、まあ、そこは我 慢我慢と思っていました。そのかわり、この2幕途中では見せてくれますよ。大人になったビリーと少 年のビリーが白鳥のテーマにのって、ふたりで踊るのです。もう、アダムのSwan Lakeを胸にかかえる ものとしては、この音楽だけでも胸がしめつけられます。アイザックマリンズ君、それまでは、炭鉱の 人の役とか、警察の役とかアンサンブルで歌っていましたが、ここでは本領発揮、ロイヤル仕込のダン ス全開です。ビリーが宙を舞いながら踊ります。白鳥のテーマは、あのSwan Lakeの4幕の音楽へともり あがっていきます。ビリーの夢は、そのままわたしの夢となって、Swan Lakeをみた日の苦しいけれど 、やめないでというあの気持ちの高まりへといざないます。このシーンは、映画になく、舞台ならでは の非常に印象深く、大好きな場面となりました。
クリスマスに踊るビリーをみて、お父さんはビリーの夢をかなえてやりたいと思います。雪の中、バレエの先生をたずね、どのくらい費用がかかるのかとたずね、仲間をうらぎってストやぶりをしてまでもビリーに将来を与えてやりたいと思います。トニーは納得できないけど、スト破りをしたお父さんなのに炭鉱の人々はお金を集めてビリーをロンドンのオーディションへ送ってやろうと思います。オーディションの会場で、ビリーの持ってきた白鳥の湖のテープはよれよれとなり音楽もちゃんとなりません。すっかり意気消沈してやけになるビリー。面接でも、いつものようにぶっきらぼう、お父さんがせっかく協力的なのにぱっとしないビリー。最後に、先生が帰りがけのビリーを呼び止めて聞きます。
’踊っているときは、どんなふう?’そう、映画では、ビリー少年がすごくぶっきらぼうに、短いことばで、でもダンスに対する正直で素直な感想が胸につきささるところです。やっぱり、ね〜。ミュージカルはここ歌なんですよ。まあ、しょうがないわね。もりあがりのところだし。歌もよかったよ。でも、あのぶっきらぼうなコメントにはかなわなかったね〜。ちなみに、内容は同じです。電気が走るみたいってやつです。
オーディションからもどり、街の生活がふたたびはじまります。ビリー少年に合格通知がきたころ、炭鉱はまた再開し、お父さんとお兄さんと仲間たちは、暗い地下へとまたもぐっていきます。ビリー少年はそれとは対照的に将来にむかって外へととびだします。ここで、ビリー少年は舞台の外へ歩いてくるのです。舞台上からは、マイケルが’Dancing boy!'と叫んでいます。マイケルにちゅってお別れのキスをしてビリー少年は旅立ちます。
物語は、ここで終わりますが、ショーはおわらないのですよ。カーテンコールもふくめて、まだ出演者たちは、Dancing, dancing.もう、ダンスはとまりません。基本的に歌うけど、踊らなかった先生もチュチュをきて舞台にでてきます。そして、アンサンブルのおでぶのおじさんたちもバレエのステップで踊ります。ビリーたち子供も、タップをはじめてとするダンスを休むことなく繰り返します。すごいよ、ビリー、ほんと、疲れを知らない少年。もう、この子の踊る姿に、とまることのない姿に胸がきゅんとなります。ビリーエリオットは、よいお話です。エルトンジョンの音楽もよいです。だけど、何より、何より、このビリー少年と子供たちのダンス、これがこのミュージカルの醍醐味です。すごいです、ロンドン。また、新たな傑作が生まれました。
|