Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [85]   イブラヒムおじさんとコーランの花たち
2005年7月23日 ソワレ
博品館劇場(東京)
浦井健治
 
もうすぐロンドンだというのに、まったくもって今月は忙しい月です。そろそろゆっくり体力温存したいところですが、何しろ身内の気持ちなので、浦井君の舞台があるというからにははずすわけにはいけません。これぞ先行発売というほどよいお席でした。最前列の真ん中。博品館みたいな小さなところで、まん前なんて、こっちが恥ずかしくなるほど近くでした。実のところ、あんまりどういうものだか把握せずに出かけたところ、どうやら朗読みたいです。でも、ピアノがおいてあるし、もしかしたら、歌ったりしてくれるのかなと思いましたが、残念ながら本日は、歌わない浦井君でした。
 
舞台左手に、グランドピアノを弾く女の人、その横にクラリネットを吹く男の人、舞台真ん中に、スタンドとお水と本をおく譜面台と浦井君の座る椅子。上演時間をみると、5時から6時40分まで、休憩はないようです。短いような、長いような、なんだか計りかねる状況です。
 
そして、地震のため15分遅れで始まりました。間近にみる浦井君は、やはりかわいいです。生身の日本人で、こんなにかわいい子が現実にいるのかしらと思うほど、顔がちっちゃくて、その中に絶妙なバランスでパーツは配置され、恵まれた長い手足。これから、1時間40分も、ず〜とこうして、この子を目の前でみるのだわと思うと浮気心高まります。
 
お話は、パリのユダヤ人街の少年モモ(本名はモーゼ)の語りですすみます。モモは、厳格な弁護士の父と二人暮らし。母は、モモが生まれてすぐに、兄のポポロと連れて家をでました。陰気で厳しい父への反抗から、家のお金を持ち出して、モモは娼婦を買いに行きます。そして、またそのお金を得るためと父への反抗から、イブラヒムおじさんの家で万引きを始めます。イブラヒムおじさんは、ユダヤ人街の中にいて、アラブ人と呼ばれている狭いお店の椅子から決して動こうとしない穏やかな人です。モーゼのことをモモと呼んだのはイブラヒムおじさんです。ある日、映画の撮影でブリジットバルドーがやってきたのをきっかけにモモとイブラヒムおじさんは仲良しになります。イブラヒムおじさんは、モモが万引きしていることをわかっていて、’万引きするなら、よそのお店でなく、自分のお店でしなさい’といってくれます。イブラヒムおじさんは、いろんなことをよく知っていて、モモにコーランもくれます。それまで、父との暮らしにうんざりしていたモモに楽しい日々がはじまります。そんなある日、モモの父が家を出て行ってしまいます。それを隠してくらしていくモモですが。まもなく父の自殺の知らせがはいります。そこへ出て行った母が様子をみにやってきますが、母をうけいれられないモモは、自分はモーゼの友達だと嘘をつき、その嘘を知りつつ、母はモーゼのことをたずねます。誰も身内のいなくなったモモをイブラヒムおじさんが身内にしてくれることになり、ふたりは、車を買って、おじさんの故郷へ旅することになります。ヨーロッパを横切り、イスタンブールいはいり、おじさんの故郷、イスラムの街へとはいっていきます。そこでモモは、おじさんの友達にあったり、イスラムの文化にふれたりと楽しい旅の日々を送ります。が、もうすぐ故郷という時におじさんは、交通事故でなくなります。モモは、おじさんの教えを胸にパリに帰って大人になります。大人になったモモは、おじさんの店をついで、時々、モーゼの友として、自分の家族をつれて母のもとへもたずねるようになっていました。
 
なんだか、話が長くなりましたが、まあ、それだけのことなんです、話って。わりと、ユダヤ人の過去とか、イスラムのこととか、家族のこととか、ちょこちょこ人生の重みのようなエピソードもあったりするんですが、わりとありがちで、朗読ゆえにわりと単調で。浦井君の近くの席なので、リラックスもできず、疲れました。時々、音楽が流れる間、浦井君が読むのを休んで、ピアノの方をみていると、横顔の向こうに長いまつげがみえて美しいんですが、通常はず〜と本をみてうつむいているのです。今日は、ほんと、浦井君そのものを見にきたのだわと思いました。だって、この話つまんないんですもん。これは、浦井君じゃなかったら、観にいくことはなかったでしょう。音楽もどうでもよかったし。朗読のできはというと、数箇所噛んでました。ただ、モモの感情をあらわすときの語りは、彼がモモにみえてちょっときゅんと思う時もありました。これは、なんだかファンクラブのイベントみたいなもんじゃないでしょうか。多分、作品がみたいとか、この企画が楽しみできたしろうとはいなくて、関係者以外は絶対浦井君を観にきたのだと思います。まあ、最前列で1時間40分浦井君の姿満喫しただけで、今日の入場料はよしとしよう。
 
で、2月の公演のチラシがはいっておりました。アルジャーノンに花束をがミュージカルになり、浦井君が主演だそうです。ああ、なんだか嬉しいけど、いやだわ。浦井君が演じる知恵遅れの青年のけなげさが目に浮かぶようだし、最後にまたその姿に戻るまでの苦悩の姿もなんだか想像つきます。あまりに似つかわしく、でも痛々しくてみていられない。と、思いつつチラシよーくみたら、戸井さん(勝海)も出るらしい。宮川浩という歌だけは聞いたことのある昔のマリウスもだ。ダブルマリウスだ。原作は、つらくて嫌いだけど、ちょっと楽しみな舞台になりそうです。今度は、ミュージカルだしね。
 
 
 
 
 
update:
2005/07/24



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