2005年7月17日 マチネ
東京文化会館(東京)
マノン:タマラ ロホ デ・グリュー:ロバート テューズリー
レスコー: ホセ マルティン ムッシューGM:ウィリアム タケット
レスコーの愛人:マーラ ガレアッツィ マダム: ジェネシア ロサート
看守 : ギャリー エイヴィス
英国ロイヤルバレエのお引越し公演があるというのは、もう去年くらいから知っていましたが、何しろお値段がお値段なのでと思っていたら、出ましたエコノミー席。バレエ初心者にも嬉しいお値段です。東京文化会館の5階は怖いと噂には聞いていましたが、2列目といえども、やっぱり怖かったです。まさに5階建てのビルの屋上から、バレエ観てるような感じです。しかしながら、右の端っこなので、舞台そのものには近く、表情を見るとき以外にオペラグラスは必要なかったです。
この作品は、マクミランの振り付けです。それもこの作品を観たかった理由の一つです。昨年、マイヤリングで見たアクロバティックな中になんともいえない官能の香りただようパドドゥは忘れられません。それにこのストーリー、期待は高まります。
幕が開くと、音楽もよいです。衣装もオレンジを基調として、微妙にベージュだったり茶系だったり金色だったり、とてもおしゃれです。なんだか、これ好きかもという予感が早くもたちこめます。が、たくさん人がいっぱいいて、誰が誰だかさっぱりわかりません。あ、いました、見慣れたお方。ムッシューGMのタケットさんです。お上品なお金持ちらしさにあふれています。そして、どうもジーザスパスターに見えてしまうレスコーも見つけました。舞台のあちこちみていると拍手がおきて、マノン、ロホの登場です。オペラグラスを構えてみると、なるほど、かわいいです。単にかわいいだけじゃなくて、力強い表情をしていて、これは男の人が翻弄されるタイプです。案の定、ムッシュもいっしょにきた老人も、デグリューも皆々マノンに釘付けです。
そうこうしているうちに、マノンとデグリューは恋人同士の関係になり、デグリューの下宿でのパドドゥの場面になります。うーん、これですよ、これ。マクミランならではの、ちょっとこわい、でも美しいリフト。そして、決めのところで抱き合う姿勢に現れる愛しさの深さ。ちょっと、涙じわっときそうになりました。ここでのマノンは、デグリューのことをとても愛しているように見えます。デグリューが出かけ、レスコーがムッシュGMをつれてやってきます。あんなに愛していたようにみえたのに、マノンはムッシュのプレゼントに心ぐらぐらとなります。
2幕、レスコーがパーティで酔っ払って踊っています。レスコーの愛人は、あとで気づいたところによると、去年マイヤリングでマリアベッツェラだった人です。スペイン系多いですね。去年は、年齢がいきすぎてしっくりきませんでしたが、今回は問題ありません。レスコーを演じているのもスペイン人のダンサーです。ロホとは兄妹に見えます。妹を利用する野心家で直情的な様子がよくでています。これは、昔、アダムがやった役だそうですが、なんだかアダムだと美しすぎて想像ができません。こんなに直情的な濃い人より、デグリューの方で見てみたいです。マノンはムッシュGMにつれられてパーティにやってきます。お金にまかせ若い愛人を思いのままにしている様子がありありする振り付けがありました。マノンの片足をつかんでそれを軸にマノンを二人がかりで回転させるのです。なんか、こういうことしていいのかしらねと思うような、振りでした。お金持ちといちゃつくマノンを悔しげにみつめるデグリューは彼女を連れてかえろうとしますが、ムッシュとカードで勝負をすることになります。この場面は、残念ながら、見切れそうな位置でした。できれば、左奥のテーブル使ってほしかったです。ゲームの途中で争いになり、その場は混乱します。剣をぬいて男たちが戦いはじめ、ムッシュは腕を切られてしまいます。
マノンとデグリューは、再び下宿にもどり愛を確かめあいます。そこへ、ムッシュGMが警察をつれて現れ、マノンを逮捕させます。その混乱の中、レスコーは殺されてしまいます。
3幕、舞台は流刑地、アメリカです。おしゃれなうすいブルーの制服をきた看守たちのもとに髪を短く切られ、カーキ色みたいなぼろぼろの服をきた女囚たちが降りてきます。マノンとデグリューもぼろぼろになって降りてきます。看守のボスがマノンに目をつけています。この看守さん、バレエにしてはわりとはっきりした演技で、こわいんです。元Kバレエにいたギャリーエイヴィスさんという方だそうですが、素顔と舞台のギャップは大きかったです。マノンは、この看守に犯され、それを助けようとしたデグリューは看守を殺してしまいます。マノンは、深く傷ついて弱っているはずなのに、この看守を足で蹴って生きているかどうか確かめたりします。その気の強さがなんだか好きだなマノンという感じでした。
二人は、追ってを逃れて沼地へと逃げ込みます。もうマノンは弱って死にそうです。これ、霧がたちこめているんでしょうか。何かテープみたいなものがぶらさがっている奥には過去の人々がいきかう姿が見えます。弱ったマノンを抱きかかえ逃げる二人の最後のパドドゥです。死にそうだけど、力強いです。お互いにもうお互いしか頼れるものがない、情熱というよりも追い詰められた切なさを感じるパドドゥでした。
今回は、4人づつ、マノンとデグリューを演じており、見比べいる方も多いようです。わたしは、他を知らないのですが、ロホもテューズリーもすばらしいと思いました。ロホの瞳に光る力強さが(遠いのでほんとはよくわかんないんですが、全体から感じました)マノンの女としての本能的な生命力を感じさせ、人知れず男性を翻弄する魅力にあふれていました。テューズリーのデグリューは、立ち姿がいかにもこういう女に運命狂わされそうなフランス人のいいとこのお坊ちゃんなんです。マノンを愛して、信じようとして、マノンも愛を示してくれるんだけど、いつもいつもなんだか、すり抜けられてしまうような切なさがあるのです。幾度かでてくるパドドゥが愛にあふれて、情熱的なのに、なんかそこはかとなく、デグリューが哀れにみえちゃうんです。最後は、二人だけなのに、結局死なれちゃうしね。コープが観れないのは残念でしたが、思わぬところでよいダンサーに出会えた気分でした。
よい舞台でした。やっぱり好きだな、マクミラン。アダムは、この人に影響を受けているなと思われるところが感じられました。今度は、もう少し低い階から、安全な気持ちで見てみたいものです。お金もちなら、他のデグリューやマノンも見たかったです。得にイタリア系、ムッルとボッレ見たかったです〜。あと、ギエムもバッセルも。そうだ、昨日までは、チアゴのレスコーも観たかったのでした。でも、ジーザスじゃなかったホセのレスコー良かったで、チアゴのことはそんなに心残りではありません。
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