2005年7月1日 ソワレ
東京芸術劇場(東京)
ジェームス:ウィルケンプ エフィー:ハンナバッサロ ロビー:ジェームスリース
ドーティ:シェルビーウィリアムズ ガーン:リースマイクル マッジ:友谷真美
アンガス:フィリップウィリンガム ユアン:ロスカーペーンター
ジーニー:ジェマペイン モーラッグ:レイチェルランカスター シルフ:ノイトルマー
本日2度目です。セブンイレブン割引とウィル出演情報のおかげで、7800円でL列センターブロックをゲットし、今日はウィルのダンスを堪能しました。別にウィルのファンってわけじゃないんですけど、今日みて思うに、ジェームスはやっぱりウィルで見たい役なのです。彼は、結構かわいい顔だし、映画にも出てるし、若い時から’カーマン’だの’Swan Lake’でおいしい役やってます。その割には、心からう〜ん、よいわと思ったことはなかったんだけど、この役のウィルはよいです。いつまでも続けられる役ではないので、今が旬のよさというのもあります。若さゆえの破滅と暴走、こういう役柄って、ちょっと胸がきゅんとなって抱きしめてあげたくなる感じがおきるとき、そのキャラクターに感情移入して作品から離れがたくなります。今日の彼のダンスというかパフォーマンスは、まさにそうでした。ジェームスリースでみてもいいかなと思ったこともあったけど、また観るとしたらウィルよね、いやいや、もう観ません。これ以上みて深みにはまってはいけませんから。
この作品は、たぶん前回のSwan Lakeが好きな人なら、好きな作品ではないかと思います。アダムの美しさに圧倒されて忘れられないということをとりあえず脇においといても、2003年にみたSwan Lakeそのものが好きということってあるじゃないですか。それが、今年のSwan Lakeでなんだか納得できないような割り切れない消化不良な感じ。アダムが不在ということだけでなくて、なんだか、これでいいのかマシューボーンみたいな。AMPからニューアドベンチャーにかわって、Nutcracker!とかPlay Without Wordsとか、おもしろいけど、心に訴えるものが希薄という流れのままきてしまった2005年のSwan Lake。マシューの作品て、こういうものなのかしらと、最近うすうす感じていたもやもや。そういうことを払拭してくれるような勢いのある作品なのです。多分、初演当時はとても斬新な演出であったであろう、振り付けや衣装が奇をてらうことなく、作品を面白くしようという真摯な気概を感じさせるのです。兵士の物語の初演に感じたような情熱に似ています。若いカンパニーがああしたい、こうしたいというアイデアをつめこんで作品をつくりあげた時のコアが再演の今に引き継がれているのではないかと思います。
今回は、こちらもダンサーさんたちも慣れて落ち着いてきたせいか、ジェームズとシルフのキャラクターも詳細に見れたし、それ以外の登場人物の個性も見えました。特に今回シルフがよかったです。ノイトルマーは、Nutcracker!ではシュガーを演じて、なんか外見の違和感のせいであまりいい印象がありませんでした。しかし、今回のシルフは、シルフメイクですから外見はあまり東洋人だの西洋人だのというところは明確にはみえません。真っ白のファンデーションに目のまわりを黒くぬっているので。彼女のダンスには演技があります。シルフのいたずらっぽさや、ジェームズに恋してジェームズについていくところ、羽を切られて力尽きていくところ、実際は遠くて表情はわからないのですが、その表情がみえるようなダンスなのです。特に羽をきられた後にジェームズと踊る血まみれの姿が印象的でした。おなじくNutcracker!で共演したフィリップ君のダンスも好きです。小さい人ですが、線がきれいでダイナミック。特に個性が強い役柄ではないけれど、お友達役も、シルフィードになったときも、見失うことのない独特の雰囲気があります。できれば、ガーンの役でも見てみたかったです。残念といえば、アダムガルブレイスのロビーも観たかったです。この作品は、今までみたマシュー作品の中で、もっともダンスが激しくノンストップな作品です。出演者の数は多くないので、ひとりひとりがそれぞれの背景をもった登場人物で、群舞で踊るシルフィードさえそれぞれが、背負っているものがあるような感じをうけます。それだけ、ダンサー一人ひとりのパフォーマーとしての実力をとわれる作品なのでしょう。今日の出演の皆様は、この点でも合格であったと思います。
と、いうわけで、この作品のひたむきさと、丁寧に演じられていることをとても好ましく思います。サドラーズで、冬の公演の切符が完売、夏に再演と聞いて、なんでだろうと思っていたのが自分の目で見て答えをえることができました。心ひかれる作品というのは、自然と観客がついてくるのです。日本公演はどうも、出だしはあまりチケットが売れてなかったようですが、じわじわリピータが増えているようです。作品そのものがよいのだから、もう少しチケットの価格設定とか売り方を考えれば、もっと多くの人とこの感動をわかちあえるのにと思います。このような中規模な作品を呼べる力量とセンスがあるなら、どうすれば、より多くの人が劇場に足を運べるかを考える力だってあるはず。このような作品こそ、もっと多くの人が観れる機会が増えてほしいものだと思っています。
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