Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [92]   愛と幻想のシルフィード(1)
2005年6月23日 ソワレ
東京芸術劇場(東京)
ジェームス:ウィルケンプ エフィー:ミカスマイリー ロビー:ジェームスリース
ドーティ:シェルビーウィリアムズ ガーン:リースマイクル マッジ:ノイトルマー
アンガス:マットフリント ユアン:ロスカーペーンター ジーニー:ジェマペイン
モーラッグ:?? シルフ:ケリービギン(たぶん)
 
本日は、初日です。初日は、多分マシューボーンがくるだろうし、ウィルケンプが踊るに違いないとふんで、チャコット割でチケット買いました。狙い通り、開演前にマシューにサインもらったし、ウィルも踊ったし、ロンドンでも会えなかった生ウィルにも会えたし、なかなか楽しい日でした。
 
これは、原題はハイランドフリング(Highland Fling)という、AMP時代のマシューの初期の作品の再演版です。ベースは古典の’ラシルフィード’だそうです。’ラシルフィード’は、NHKでパリオペのマチューガニオが踊るのをちょっとだけみましたが内容は把握していません。マシューボーンの本でハイランドフリングの製作過程は確かに1回は読みましたが、これまた記憶に薄いです。と、いうわけでなかなか新鮮な気持ちでのぞんだのでした。
 
お話は、現代(といっても、70年代か80年代くらい?)のグラスゴー。ドラッグをやっている青年ジェームズが婚約を控えていながら、荒れた暮らしをおくっている様子。婚約者のエフィーに秘かに思いをよせているお友達もいるらしい。ジェームズは、ドラッグでトリップしている時、妖精のシルフをみて恋してしまいます。自分の結婚式の夜にさえ、シルフの姿をみて追っていきます。第一印象、ダンサーの衣装がかわいい。みんなタータンチェック模様で、ジェームズと幾人かの男の子たちは、キルトっていうんでしたっけ、スカートみたいなのに、白いハイソックス。これに、皮ジャンとか重ねています。ウィルは、髪を短くしたみたいで、もうちょっと長くてもよかったです。’兵士の物語’で最初にみたときと同じく、結構彼のダンスって、荒っぽいです。ロイヤルバレエスクールの出身とは思えませんね。まあ、役柄上、違和感はありませんが。ダブルキャストで今日は別の役のジェームスリースのほうがダンスはきれいかな。1幕は、退廃的なクラブのお手洗いでのダンスとか、公営アパートでのダンスとか、マシューボーンらしいはじけたダンス満載です。アパートの中もタータンチェックで、色は基本的に原色。現実の世界の色は、とてもヴィヴィッドです。
 
2幕は、シルフを追って妖精たちの世界で踊るジェームズ。妖精たちは、白い衣装に目のまわり黒くぬった妙なメーク。背中には羽がついています。1幕のお友達役のひとたちが、男女いりまじって、妖精になっています。ジェームズは、シルフをつかまえて、二人で生きていこうと妖精の世界からつれだそうとします。シルフはついてくるけれど、それでも飽き足らず、ジェームズはシルフを自分のものにするため羽をはさみで切ってしまいます。羽を切られて死んでしまうシルフ。ジェームズもその後を追います。元婚約者のエフィーとガーンが結婚してくつろぐ部屋の外に妖精になったジェームズが。2幕は、まさにこの作品がSwan Lakeに至るまでのマシューボーンの歴史を感じさせる演出でした。そうですね、多分、マッキントッシュが手を加える前のフランスで初演された’レミゼラブル’みたいな感じ。大きな作品が生まれる前の原石の輝きの片鱗がみえるのです。妖精たちのメークも群舞も、あの白鳥の群舞を彷彿させます。あらけずりで、洗練された感はないけれど、妖精たちの息遣いや素足で鳴らす床の音、人ではない動き、これらにみがきをかけ、完成にいたったのが、きっとSwan Lakeの群舞だったのでしょう。妖精たちの間をぬって踊るジェームズは、白鳥たちに翻弄される王子を思い起こされるし、シルフと踊るジェームズは、The Swanと踊る王子のような感じ。そして、最後に窓の外に現れるジェームズもSwanが最後に王子のベッドの後ろにうつる姿に重なります。そうか、Swan Lakeは、ある日突然生まれたのではなかったのね。AMPの小さな作品やこういう中規模の作品を重ねて、花ひらいたのがSwan Lakeだったのだとこの作品そのものよりも、その成り立ちに感慨を覚えたのでした。
 
上映時間は、前半、後半ともに40分弱。短いなと思いましたが、内容的にけっこうどぎついものなので、このくらいにおさめて正解でしょう。この作品は、ロンドンで爆発的なヒットというわけではなく、時代的にも比較的新しいもので、規模もそこそこなのに、こうして日本にいながらにしてみれるというのはラッキーだと思います。東京も文化度が高くなったものです。もう少し、正規のお値段が安くなると尚よいかと思います。
update:
2005/06/23



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