2005年5月25日 ソワレ
帝国劇場(東京)
ジャンバルジャン:今井清隆 ジャベール:鹿賀丈史
フォンティーヌ:岩崎宏美 エポニーヌ:島田歌穂
コゼット:知念理奈 マリウス:石川禅 アンジュルラス:岡幸二郎
ティナルディエ夫婦:森公美子 斉藤晴彦
今期日本版ラストは、2000回記念キャスト公演です。レミゼラブル初心者でありながら、こうして伝説のキャストに出会えたことはラッキーとしかいいようがありません。去年からレミコンに出かけ、今期からはじめて日本版をみはじめて、う〜ん、日本のレミゼはこんなもんかもねと半ば現実受け入れるしかないのかという気持ちになりかけていたところでした。が、今日のこの感触は、ロンドンで観たときの気持ちがよみがえるようでした。作品に対する深みのようなものを感じました。若さではじけるような新鮮さはなかったけれど、じっくり熟成された奥までじわじわ届く味わいのある舞台であったと思います。
今井さんのバルジャンは、やっぱり好きなバルジャンだなと再認識しました。今期4人観たなかで、一番やさしくてあたかかくて、人間らしさにあふれています。ジャンバルジャンの人としの大きさが、ジャベールとの対決に負けていなくて、しっかりと土台をなしている感じを受けました。
何が今回この公演のグレードをあげているかといっても、やっぱり、鹿賀さんでしょう。ま、もちろん期待はしてましたが。最初、’奴をここへ呼べ24653’の一声を聞いたときは、あ〜、そうでもないかもと思ったけど、話がすすむにつれて、ジャベールの人柄がどんどんにじみでてくるのです。そうだよね、ジャベールは、このくらいしっかり演じてくれなくちゃねと、はじめて日本でジャベールらしいジャベール観れました。今までみた日本のレミゼは、なんかうすかったのは、ジャベールのせいだと前にも書きましたが、ほんと、そのとおり。ジャベールがしっかりしていると作品がぐっとひきしまります。重みが違います。ジャベールが自殺までしてしまう執念の正義をつらぬいた人生、はじめて納得できました。マッカーシーおじさんの冷徹な抜群の歌唱力とはまた違った、人として深みのあるジャベールでした。
フォンティーヌの岩崎宏美も期待は大きいです。これは、彼女だけじゃないんですが、今回の記念キャストって歌唱力は多少さびついてはいるけれど、細かい演技がさすがなのです。岩崎宏美はその典型でした。’夢やぶれて’は、正直がっくりくらい声出てなかったです。が、それを差し引いても、泣かせてくれました。岩崎宏美のフォンティーヌもか弱いばかりじゃなく、芯が強い薄幸のお母さんでした。ただ、オペラグラスをかまえてはいけません。外見はフォンティーヌやるには、やっぱり苦しかったですね。
そしてなんたって、島田歌穂さん、楽しみにしてました。ワールドバージョンのCDで日本から唯一参加したメンバーですからね。期待は裏切られませんでした。歌もさびついてはいません。そして、何より切ないです、エポニーヌ。特に’恵みの雨’のこの悲しさと切なさとでもマリウスに抱かれている幸福感と、これぞエポニーヌでした。こういう風なエポニーヌをやるには、現キャストはまだいろんな意味で浅いんだろうなと思います。若さがないと演じられない役ですが、こういう深い切なさを出すには若さと純粋さだけでは難しいのでしょう。島田歌穂さんのエポニーヌがこれで見納めかと思うと残念ですが、一度でも観れてよかったです。
そして、何だか期待いっぱい不安いっぱいのアンジョルラス&マリウス。日本で見て、何度も失望されられましたからね。それより何より、このお二人の年齢がね。岡さんは、ジャベールやってるし、禅さんは、浦井君のパパ、フランツヨーゼフですよ。これを25歳と21歳の役やろうっていうんですから、どんなもんでしょう?で、岡さんのアンジョルラス。ほお、はじめて日本でアンジョルラスらしいアンジョルラスをみれました。彼の顔自身は別に好みじゃないのですが、この人も体型に恵まれているし、顔のつくりが派手なので人々の中にいると目立つのです。原作のアンジョルラスは、カリスマ性のある美青年です。ロンドンではオリバー君が演じてわたしを魅了した役です。しかしながら日本では、どいつもこいつも(あ、失礼)圧倒的な存在感に欠けていました。岡さんの場合は、立っているだけでリーダーらしく、たとえ赤いベストを着ていなくとも見失うことはなかろうというくらい光ってました。ただ、歌は多分調子が悪かったのか迫力に欠け残念でした。坂元健児氏にふきかえてもらいたかったです。禅さん、う〜ん、マリウスやるには見た目が年齢行き過ぎ。マリウスって、ジャンバルジャンに担がれるので、比較的小柄で細い男の子が演じることが多いです。禅さん、太ってるわけじゃないけど、やっぱり20代の青年の体型にしてはぽっちゃりなんです。日本のレミゼをみていていつも気になっていたジャンバルジャンが意外とマリウスを担いでいる時元気というのがありましたが、本日は、今井さん本当にお疲れ気味でした。禅さんは、きっと泉見くんたちよりうんと重いのでしょう。お姫様だっこもなし。ひきづられるように連れられてバルジャンとジャベールが対決するシーンがとても印象的でした。今井さん、ご苦労様、残りの日々もがんばってください。禅さんの場合、体型は別として、声は若くしているので、それほど違和感はないんですが、マリウスの若さゆえの未熟さとか甘えの部分がちょっともう大人がはいっていて、マリウスに関しては手放しに絶賛できないなと思っていました。が、です。何で、禅さんが2000年キャストに選ばれたのか納得したのが’EMPTY chaire at Empty table'です。禅さんは、フランツのときもわりと熱い奴だったので、結構熱唱系かと思っていたら、力を微妙にいれつつ、しかし嫌味なく、はっきりいって、ぐっとツボにはまりました。泉見くんも戸井さんもそれなりには好きだったけど、この歌でぐっときたのは禅さんだけでした。禅さんの体型も年齢もこの歌だけで許そうと思えてしまったのでした。マリウスは、ジョンリー君でであって以来、わたしの中ではとても大事な役どころです。是非、近い将来浦井君が、演じて、いつか、今日の禅さんのような’Empty chaire at empty table'を聞かせてくれることを祈っています。その時は、髪金髪にして後ろで結わえてね。
そういうわけで、本日のレミゼは日本ではじめて納得できるものでした。現キャストがこれくらい深みが出せるようになるにはあとどのくらいかかるのでしょう。来年春に1ヶ月だけ再演するそうです。その時こそは、本田美奈子さん復帰して、浦井君が参加してしてほしいものです。
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