2005年4月19日 ソワレ
Bunkamuraオーチャードホール(東京)
Swan&Stranger:ホセティラード The Prince : ニールウエストモランド
The Queen : ヘザーレジスダンカン Girlfriend ; リーダニエル
Private Secretary : ピーターファーネス Young Prince : ギャブパーサンド
本日は、日本初生オケの日です。チケットを買った時は、十周年だし、初日だし、もしかしたら、アダムが一度だけでも復活してくれるのではないかと儚い夢と知りつつ強く強く願っていたのでした。
わたしは、Swanの生オケは初めてではありません。ロンドンのサドラーズウエルズは生オケでした。アダムの舞台はSwan以外はいつも生オケだし、他のミュージカルだっていつも生オケなので、生の舞台には当然生オケでしょう。が、これがなかなかスリルにみちていたのです。だいたい出だしから、オーボエがホエホエみたいな力ぬけた音だしたとき、これは気がぬけないかもと緊張感が走りました。案の定、音のバランスが悪いところ、テンポが遅すぎるところ、逆にめちゃめちゃ早すぎるところ、ちょっとダンサーさんたちが気の毒でした。あんなにスピーディーな四羽の白鳥はわたしのSwan史上初めてでした。こんなことなら、テープで安定して舞台に集中したほうがよかったと舞台半ばで後悔すらしたのでした。
今日、一番残念だったのは、ニコラトラナさんが出てないことです。どうも体調よくないそうです。ヘザーレジズダンカンさんは、多分前にモナコだかフランスだかのお姫様でみたことあるような気がします。前半は冷たいお母さんです。まあ、1幕の女王はよしとしましょう。今までの女王って、お母さんである前に、一人の女として少女のような無邪気さで若い男性とたわむれては、息子をかえりみず、その無邪気さが残酷でした。特に3幕でストレンジャーと出会った女王は、嬉しくて楽しくてしかたなくて、王子が恋していることすら目にはいらないはしゃぎようでした。が、ヘザーさんは、この3幕が弱いのです。3幕で舞う表情が無邪気で残酷な女王でなく、各国お姫様がストレンジャーと一瞬たわむれるうっとり系の表情なのです。これでは、王子を傷つけるには物足りません。女王のキャラが薄まってしまいました。女王は、今まである程度貫禄があるバレエ系の方がさらっとやってのけていましたが、実は、誰にでもつとまるものでないと認識したのでした。
2度目のニール王子は、正当派英国王室のちょっとさえない系王子が板についていました。通常の物腰は、品位ある環境で育ったようにみえますが、一端みだれると暴走してしまいます。わりとおとなしい感じの王子にみえますが、なんと、ニール王子はストレンジャーに口づけしたのです。これは、歴代王子の中でもはじめてじゃないですか?舞踏会で女王とストレンジャーが戯れる姿をみて、服装も気持ちも乱れた王子が哀れな表情でストレンジャーにすがるところです。抱きつこうとした王子は今までにもいましたが、くちびるにキスした王子は初めてみました。そりゃ、お母さん怒るし、まわりだってびっくりですよね。舞踏会がめちゃくちゃになる場面、今日はなかなか衝撃的でした。
ニール王子のことをもう一つ。王子様なのに、今日はコートの袖が肩からほつれてとれかかっていました。SwanK Barにはいったときから気になっていて、公園のときは別のコート着てくるかなと思っていたら、ほつれたままでした。他の王子のコート貸してもらえなかったのか、サイズがあわなかったのか、それにしても目立ちました。王子様が、こういうのはいただけません。
本日も群舞は、ばっちりです。最近は、ホセやジェイソンのおかげで、Swan、ストレンジャー以外のダンスもみれるようになりました。たとえば、2年前は右しかみてなかったとしたら、左や真ん中や後ろという具体に。特に本日は、わたしのお気に入りのデビッドリースに注目してみましたので、スペインの踊り、ナポリの踊り、白鳥たちの群舞、細かいところまで観察できました。白鳥の群舞は、いつもいつも4幕がすばらしいです。ベッドの上で、Swanをむかえうつように、一斉に羽をはためかすところ、Swanや王子を痛めつけるところ、最後の最後に王子にとどめをさすところ、胸にせまります。生オケ、悪口ばかり書きましたが、ここだけは生でよかったと思ったのが、4幕のSwanが倒れるところです。音楽の荘厳さと生オケの臨場感と、群舞の迫力とそれらが身体全体をつつみこんで押し迫るようで、不覚にも涙がじわっとにじんでしまったのでした。それは、今までこの作品のこの場面で感じていたSwanの美しさと悲しさでなく、なんだろう、もっと本能的に涙のつぼにはまったようなそんな感覚でした。これも、一つの感動なのかもしれません。この融合こそ、この作品の強みであり、マシューボーンの才能なのでしょう。
多分、今回のツアーでは、今日がわたしにとって最後のSwan Lakeとなるでしょう。2年前に出会ったときと、同じ作品でありながら、あまりに違った印象になったことに驚きとある種の失望を禁じえない再会でした。それほどに、この作品には思いいれもあり、期待があるからこそなのですが。マシュー版Swan Lakeは、歴史に名を残す作品であり、これからも幾度となく再演を繰り返すことでしょう。今回のツアーが、通過点の一つであり、もっともっと進化したSwan Lakeを次回こそはみせてほしいものです。ゆるぎないアダムSwanの伝説を塗りかえるダンサーは現れることはないとは思いますが、せめて、これなら許せるわと、少しの感動をSwan&ストレンジャーが与えてくれるようなダンサーに出会いたいものです。それがささやかにSwanによせる願いです。
最後に、ニール王子、クリス王子、群舞の皆様、リーダニエルズさん、オクサナ女王は前回2003年を越えてよかったと思います。
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